2008年6〜7月
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6〜7月ニュージーランドのワンガレイに滞在
艇の全面的な改修と整備を行う。
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kiseki

Wind Speed = 5kt(2.5m/s), = 10kt(5m/s), = 50kt(25m/s)

  DHARMAの単独世界一周航海日誌   2008年6〜7月          戻る

JST6月2日
馬場様
ご無沙汰しております。到着した5月8日の翌日に風邪をひき、未だ十分に直りきっていない状態です。
無事ニュージランドまで辿り着いたことで気が緩んだためと思います。徐々に回復しているので心配には及びません。
ワンガレイのリバーサイドドライブマリーナ到着時には、思いがけず「WANDERLUST」の東山夫妻と「POLAIRE」の関さんが出迎えてくれました。東山さん夫妻ははハワイから南太平洋を経由、関さんは東京湾マリーナから単独でカナダから南太平洋に入り、双方ともに半年前にワンガレイに来ていました。期せずして一時は日本に戻ったような気分でした。その彼等も一週間後にはオプア経由で再び南太平洋に向かい出航しました。5月22日から30日まで、女房が例によってゴルフバック持参で訪問。近くのゴルフ場で数回のラウンドを楽しんで昨日帰国しました。
今日からは又ソロセーラーです。

ダーマ整備は順調に進んでいますが、秋雨のため若干遅れ気味です。
現在マリーナに隣接しているモーテルに滞在しています。数日前前線の通過に伴い夜半豪雨に襲われ、修理中の窓から雨が吹き込みパソコンが水浸しになってしまいました。修理に出していますが、再使用は難しそうなので、今後はバックアップ(2台残っています)を使う事になりそうです。バックアップでイリジューム通信が可能な事は確認しましたが、WDマップのソフトが利用できません。セットアッププログラムのパスワードを送ってもらうか或いはソフト全体を改めて送ってもらう必要があります。お手数ですが宜しくお願いします。整備の内容、進捗につきましては別途メールします。
 以上

追伸:ニュージランドに到着したら直ぐに送ろうと思っていた小文を添付します。

------------------------ 加藤丸船長、加藤利昭氏を悼む ------------------------

日本での大型連休が始まる頃、今年はシドニーを出帆、時化続きのタスマン海をニュージランドに向かい航海していた。昨年はカリブ海からニューヨークに向かう途中で、やはり時化の中、ガルフストリームを横切っていた。知らせを受けたのは、丁度その頃、2007年4月30日の早朝であった。2日前の4月28日、伊良子崎沖の神島付近で加藤利昭船長が操船するヨット「加藤丸」が無人で漂流しているのを発見されたとの内容である。連休を利用して伊豆七島へ向かう途中の出来事だ。始は「冗談だろう。」と思い、直ぐに「冗談であって欲しい。」と願った。数日後、恐る恐る関係者に確認した結果「広範な捜索にも関わらず状況に変化無し。」との事。爾来一年が過ぎた。その間、本文をウエブサイトに掲載すべきか否かについて迷い続けた。彼の行為を無駄にせず、今般の事故をヨット愛好家、とりわけ自分を含め単独航海者への警告とすべきことを念じ、敢えて掲載することとしたい。

加藤さん

初めて会ったのは、ダーマの製作を開始し千葉の自宅から愛知県刈谷市の三河ヨットに常駐し始めた頃だった。5年間の付き合いだったが、お互いに気心の知れた同好の士として親しくなるのに時間はかからなかった。刈谷セーリングの恒例の行事で、志摩の五ヶ所湾へ数回行った事があるが、君は常に単独航を楽しんでいた。

2004年の師走が押し迫った頃壁南を出航し、シェイクダウンを兼ね沖縄にテスト航海に出た時、途中まで付き合ってくれた時の事を良く覚えている。的矢、尾鷲と2日間伴走。当初勝浦まで行く予定だったが、時化が予想されたので尾鷲で2日間待機。2日目の夜自分が寝ている内に、君は時化が収まらぬ海を碧南へ向け戻って行った。碧南へ着いた頃を見計らって電話したところ、あの夜は「ドン吹かれましたよ。」と豪快な笑いが聞こえ、ホッと胸を撫で下ろすと同時に、君の豪胆さに舌を巻いたものだ。子供の頃から父親の趣味と実益を兼ねた釣り船の船頭を務め、ヨットを始めるようになってからも、スキューバの達人として海を楽しんでいると言う。君は、海況に関して自分には無い独特の感を備え、海との付き合いかたを知っていたように思う。

自分が長期航海に出る前、一緒に四国の金毘羅参りをするのを約束をしていた。出航日が迫り、約束を果たせぬまま、千葉の銚子マリーナに回航する前夜も遅くまで買出しに付き合ってくれた。君はその約束覚えていて、ボヘミアンの渡邊さんがハワイに陣中見舞いに来た折、金毘羅様のお守りを託してくれた。そのお守りは、キャビンの一番目立つところに貼り付け、今でも時々眺めている。

君が行方不明となってからの数日間は、漂流物に出会う度に、海上を浮遊しながら捜索されるのを待っているに違いないと思った。伊豆諸島でダイバーが母船を離れ行方不明となったが、三日後捜索を続ける漁船に救助された事実を頼りにしていた。1週間が過ぎ、2週間が過ぎた頃から「君は海鳥に姿を変え、時折自分を訪ねてきている。」と思うようになった。自分が海に出ている限り、この思いが変わる事はあるまい。僕は何時でも歓迎する。気が向いたら何時でも、訪ねて来てくれ給え。これからも一緒に航海を楽しもう。

               2008年5月8日ワンガレイ(ニュージランド)にて
                           ダーマ号船長 目黒 たみを

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JST6月9日
馬場様、作業の方は順調に進んでいますが、細かな作業を含め完全に終わるのには更に一週間ほど要する見込みです。
今のところ出航は来週月曜日(6月16日)頃になりそうです。

写真7枚を7回に分けて送ります。配布宜しくお願いします。

1)シドニーの湾口まで見送ってくれたシドニーホバートレースの常連「WITCHDOCTOR」。
2)ワンガレイー川の河口に聳える「BREAM Head」
3)WANDERLUST:タヤナ46」の東山夫妻。
ハワイで艇を購入して出航。滞在中は、小百合奥様の手料理ご相伴をさせて頂き、感謝、感謝の毎日でした。ホームポートは南勢マリーナ。
4)「POLAIRE:タヤナ54」の関さん。
ホームポートは東京湾マリーナを単独出航。カナダ経由。メインキャビンに詰め込めば10人は入れそうな本格的なカラオケを装備。関さんの美声に魅せられました。近年クルージングボートは大型化しているが、日本のヨットも欧米勢に引けを足らない程大型化しているのを身近に感じました。
5)ビーズ工房 タウンベイスンにある観光スポットのひとつ。後方右がオーナー/デザイナーのJudithさん。数年前米国からヨットでニュージランドに到着。冬季北島北部の東海岸沿いに航行中、夜半に漁船が激突。同乗していた御主人と息子さんは即死。お嬢さんと漂流中にお嬢さんも死亡。海岸に流れ着きJudithさんのみ生存。以後トラウマと戦いながら現在の事業を立ち上げたとの事。工房の名前「ANNIROSE」はお嬢さんの名前に因んでいる。後方右は旧知の「Fruity Fruits:73ftケッチ」のCalorine。前列左は荊妻。色とりどりのベネチアングラスを高圧ガスで溶かしビーズを加工しているところ。
6)改造したダーマのラダー。 強風時のブローチングを軽減するため舵を1フィート長くし、緩みの出てきた舵軸のベアリングを交換。
7)新たに取り付けたバウスプリット
強風時のウェザーヘルムを軽減するため、アウターセールを前に移動。インナーセールも前(旧ヘッドセールの位置)に移動。セルフタッキングが出来るようにブームを取り付けている。セイルエリアが増えた事により、軽風でのパフォーマンス工向上も期待している。改造に際しては、製造元の三河ヨットの堀江社長、設計者の林賢乃輔さんと相談。林さんに送ってもらった設計図を基に作業を進めている。尚林さんは日本のアメリカ杯チャレンジチームのチーフデザイナー。ニュージランドでの知名度も高い。現在ダーマのメインセールとインナージブを作っている「Calibre Sails」の主宰者、David Parrは当時助っ人の一人として「蒲郡」でセイル作りを担当していた由。

東山夫妻
WANDERLUST:タヤナ46」の東山夫妻、ハワイで艇を購入して出航。
滞在中は、小百合奥様の手料理ご相伴をさせて頂き、感謝、感謝の毎日でした。
ホームポートは南勢マリーナ。

関さん
「POLAIRE:タヤナ54」の関さん
ホームポートは東京湾マリーナを単独出航。カナダ経由。メインキャビンに詰込め
ば10人は入れそうな本格的なカラオケを装備。関さんの美声に魅せられました。
近年クルージングボートは大型化しているが、日本のヨットも
欧米勢に引けを足らない程大型化しているのを身近に感じました。

ビーズ工房
ビーズ工房
タウンベイスンにある観光スポットのひとつ。後方右がオーナー/デザイナーのJudithさん。
数年前米国からヨットでニュージランドに到着。冬季北島北部の東海岸沿いに航行中、夜半に漁船が激突。
同乗していた御主人と息子さんは即死。お嬢さんと漂流中にお嬢さんも死亡。
海岸に流れ着きJudithさんのみ生存。以後トラウマと戦いながら現在の事業を立ち上げたとの事。
工房の名前「ANNIROSE」はお嬢さんの名前に因んでいる。
後方右は旧知の「Fruity Fruits:73ftケッチ」のCalorine。
前列左は荊妻。色とりどりのベネチアングラスを高圧ガスで溶かしビーズを加工しているところ。


JST6月13日09:35JST 目黒さんからの連絡です。
ニュージーでの艇の改修に思った以上に時間がかかっています。
当初6/16頃の出港を予定していましたが、6/20頃にずれ込む見込みです。

JST6月16日11:57JST From DHARMA
馬場様
本日以下のURL受領しました。有難うございます。
http://www.wamwam.co.jp/wetos/meguro/
早速アクセスしましたが、大変見やすく、情報も多岐にわたっているので、航海計画や出航のタイミングを決定するのに最適です。来週末にかけて引き続き悪天候、逆風が予想されているので、更に10日程度滞在することになりそうです。出航の目処が付き次第連絡します。

追伸:当方の近況「ワンガレイ便り」を添付します。関係者への配布をお願いします。

-------------------------- 「ワンガレイ便り 2008年」 ----------------------------------

6月11日(水)
2005年6月12日に銚子を出航して以来、今日で丁度3年になる。当初の予定では今頃銚子に戻っている筈だが、インド洋とタスマン海を渡るのに手間取り、2ヶ月の遅れが出ている。 かなり前からボヘミアンの渡邊さんやアルバトロスヨットクラブの有志等と5月中旬にニューカレドニアで会う約束をしていた。当方の予定が遅れたため、楽しみにしていた再会を反古にする結果となった。ボヘミアンは母港碧南2月中に出航、サイパン、トラック諸島を経てポナペに到着したが、台風シーズン前に帰国するとの当初の予定を守り、台風と競争しながら無事帰国した。
今回のワンガレイ滞在期間は、セイル作成とテストに3週間を予定、その間に可能な限りの整備をすることにしていた。現在は多少時間を要しても、気が付いた作業を総て完了した上で出航することにしている。主な作業を列挙すると。
1) メインセイルとインナージブ作成
2) ラダー改造
3) バウスプリット作成
4) セルフタッキングジブ作成
5) ブームの整備
6) デッキのノンスリップ塗装
7) ジブファーラーの整備と一部延長
8) バックステイアジャスターの整備
9) リギン(一本)・ハリヤード(一本)交換
10)コクピット後部に波よけ板取り付け
11)エンジン整備
等で作業は8割程度完了。バウスプリットとセルフタッキングジブを取り付けたことにより、セールのコントロールロープの配置が大きく変わる。この変更に後一週間近く要する見込み。
その他に航海中気が付いていた、生活の知恵的な、細かな作業を続けている。このため船内がごった返しているので、もう暫くモーテルでの暮らしが続きそう。

エンジンのギアオイル交換の際、ギアボックスのオイルの半分以上が海水で置き換わりエマルジョン化していた。シール部に小さな貝殻が貼りついており、これがギアボックスに海水が浸入した原因と思われる。前回ギアボックスのクリーニングをしたのはワンガレイ滞在時で、以後1年半で約2000時間使用している。オイルは150時間を目安に交換し、時々ギアオイルのレベルをチェックしていたが、1000時間を目安にギアボックスのクリーンニングが必要と痛感。

6月12日(木)
過去2週間好天に恵まれ、作業が大いに進んでいる。本日、ステンレスやアルミニュームの加工を要する主要な工事が完了。艇を海面に浮かべポンツーンに移動。これまで幾度も見てきた光景。次に上架するのは帰国後であって欲しいと念じながら作業を見守る。銚子出航以来8回目の上架となった。以下過去の上架場所を時系列順に列挙。
1) バンクーバー :カナダ
2) オアフ島  :ハワイ
3) ライアテア :フレンチポリネシア
4) ワンガレイ :ニュージランド
5) チャガラマス :トリニダッド
6) ラゴス :ポルトガル
7) ケープタウン :南アフリカ
8) ワンガレイ :ニュージランド

6月13日(金)
毎週火曜日は、タウンベイスンの「REV :レストラン」がセイラーズデイと称して食事、飲み物を半額で提供する。顔見知りも多いので、火曜日はここで夕食をとることが多い。ワンガレイ・クルージング・クラブは毎週金曜日に夕食を提供するので、金曜日はここで夕食をとる。2週間前の日曜日は、月例のクラブレースに参加。最近は「TEMPRESS」という船齢50年の木造船に乗る事が多い。オーナーのマイルスとは旧知の仲。彼の紹介で、画家のトムが、ワンガレイ湾の入り口、ブリーム岬を背景にダーマの絵を描いてことになり、今日はその打ち合わせも兼ねている。明後日の日曜日は、月例レースがあるので、クラブハウスは何時もより混雑している。レース委員長のノエルに、ダーマのセーリング準備が揃い、天気が良ければで参加すると伝えた。

6月16日(月)
土曜日から崩れかけていたが、日曜日から本格的な時々突風。今日も雨が続いている。今日はインターネットカフェでワイヤレスサービスを1週間延長。日本の銀行やカード会社に支払い通知、現金を希望する業者のために、現地銀行で米ドルを現地通貨に交換等をし、少しずつ出航準備と作業の後始末をしている。昨日夫婦と10歳前後の男の子を2日連れた現地のヨットがフィジーへ向けて出航した。本日ワンガレイの本港(MARSDEN POINT)で出国手続きをすると言っていた。先程1週間先までの予報をチェックしたが、ニュージランドの北海域はかってないほどの荒天が予想される上、北上するには逆風となる。出航を更に10日ほど遅らせることになりそうだ。

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JST6月26日15:20JST From DHARMA
馬場様
先程電話にて伝えましたように、可能であれば、6月30日(月曜日)現地時間で正午頃に出航できるよう準備を進めています。
目黒

追伸:現況を添付します。

-------------------------- 「ワンガレイ便り 2008年−2」 ----------------------------------

6月25日(水)
悪天候により出航が大幅に遅れているが、その期間を利用して大小さまざまな整備をしてきた。整備項目は50を超え、気が付いた事は総て実施した。一つだけ残したのは、マスとトップのジブハリヤードのシーブの交換。アウタージブのシーブが回転せず、ジブの昇降に不具合が生じている。ただし一旦、やや強引にセールを上げてしまえば、セールの修理等特別の事が無い限り降ろす必要は無い。リギンやハリヤードの交換をした「リギングアンドスパー社」のポールでと三河ヨットの堀江社長と相談した上で、シーブの交換は帰国まで持ち越す事にした。現在現地時間の夜11時、外は豪雨と雷鳴。悪天候は今週末まで続く気配だが、来週始めには3日程度の小康状態が訪れる見通しなので明日から出航準備を始める事にしている。

一昨日、親しくしていたアメリカ艇「Eagle's Wing:55ft」のケンとべス夫妻が西サモアへ向け出航すると言って挨拶に来た。彼らは1週間以上前から出港準備を完了。偶々気象予報を見ていたので、「今週末まで航路上の海況は悪い。数日様子を見たほうが良い。」とアドバイス。「28ftの船でケープホーンを回ったタミオが言うのなら聞かない訳にはいかないなあ。」と旦那のケンは苦笑い。ベスはホッと胸を撫で下ろした様子。彼らは、今日正午近く、リバーサイドマリーナから15海里離れたワンガレイ川の河口にある本港( Marsden Point )に向けて移動。金曜日に出航手続きをし、可能であれば日曜日には出航するらしい。

Eagle's Wingを見送って間もなく、旧知の「Fruity Fruites:73ft」のステファンとキャロライン夫妻が出航の打ち合わせに来た。彼らは2年前ワンガレイで会って以来、ニューカレドニアとニュージランドで半年ずつ過ごしている。2卵生双生児の姉ステファニーと弟ジェイソンが今年9月から大学生。子供たちの英国留学が始まるまで、ニューカレドニアで過ごし、その後は夫婦で北太平洋のクルージングを計画中。2年前会った時から、日本に行ってみたいと言っている。彼等とは金曜日にタウンベイスンのレストランで、朝食がてら出航のタイミングを打ち合わせる事にしている。

悪天候にもかかわらず、温暖な南太平洋洋諸島へ向け出航したヨットもあるらしく、昨日の新聞(The New Zealand Herald June 24, 2008)では2隻の事故が報道されている。1隻はオプアを出航したシングルハンダーのドイツ艇「MUTU」。5月末にオプアを出航、ニューカレドニアに向かう途中で消息を絶っていた。数日前ワンガレイの東50海里にあるグレートバリア島の近くで漁船が無人のヨットを発見。メインセールはブームに固着されていたがジブはズタズタに引き千切れた状態。ハーネスが舷側からぶら下がっており、ロールオーバーしたのではないかと報じられている。偶々発見/曳航した漁船がリバーサイドマリーナに現れ、救助した時の状況を数人の友人が詳しく聞いている。もう一隻もシングルハンドで、アメリカ人のCharles Whittleが所有する6.5mのヨット「Resolution」。Witttle氏は1週間前、ワンガレイの北東150海里にあるタウルンガをハワイに向け出航。
北島の北部まで辿り着いたが、悪天候に加え、燃料タンクの漏洩に気が付き補修のためタウルンガに戻る途中、やはりグレートバリア島で座礁。遭難救助信号を発し、沿岸警備隊のヘリコプターで救助されている。新聞では、暗礁に乗り上げ横倒しになったヨットの痛々しい写真とともに「Whittle氏は家族と共に日本に住んでおり、長年の夢を実現するためニュージランドで航海の準備をしてきたが、今回の事故でその夢が打ち砕かれた。」と報じている。

6月26日(木)
出航準備のため、モーテルやコンテナーに保管していた積荷の移動を開始。「昨夜の雷は凄かった。」と言うのがマリーナ内の挨拶代わり。何時もは賑やかなマリーナ内の小さな工場の職員たちが、何時に無く無口で黙々と仕事を進めている。自分が育った北国でも、厳冬期の北風が吹きすさぶ時、人々の口が次第に重くなっていった。マリーナにも川沿いに雨交じりの西風が吹き荒れ、リギンが唸り声を上げている。首尾良く月曜日に出航できるかどうか、以前未知数だが準備だけは進める事にしている。

以上
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2008/6/27/09:12JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
6/30の予想天気図を見ると、低気圧はニュージの東に抜け、同島北沖に分布する高波高域も翌7/1には東に抜けるでしょう。従って、風波やや高めですが、同日の出港に大きく支障となる海況ではなさそうです。
ただし、同時期に西から移動性高気圧が北に進んできますが、東進速度早く、7/2には航路の東へと抜けるため、航路上は北西風が続くと予想されます。本船にとっては真上りの風です。
7/3以降の低気圧は南島を通過すると予想されているので、30S以北に大きな海況変化を与える事はなさそうですが、この北東風にどう対応するかがポイントです。
1.一旦大きく北東へ進み、南東風に変わった時点でニューカレへと変針する。この場合航程は2-3倍を見込んでください
2.目的地を北東方の島に変更する
3.次の機会を待つ
小生の頭で考えられる事は以上です。ご検討ください。

2008/6/27/14:50JST
<馬場社長から目黒さんの情報>
先ほど目黒さんから電話がありました。修理はほぼ完了したものの、セール等のテストが出来ていない事と、良い海況が長続きしないとの予想から、出港をしばらく延期するとのことです。

JST6月29日 From DHARMA
馬場様
気象情報受け取りました。船の整備は完了しましたが、未だ十分な帆走テストをしていない上、出航後気象条件が良いのは2日間だけ。その後荒天に遭遇する危惧もあるので今回は出航を見合わせます。7月8日に船のビザ(今回は2ヶ月間)が切れるので、週明けにビザの延長手続きした上で次のウェザーウインドウを待ちます。
以下近況です。

6月28日(金)
早朝1週間先の気象情報を確認した上で、午前10時、同時期にヌメアに向かう「Fruity Fruites」と打ち合わせ。日曜日に再度気象を確認する事で同意。税関には、3日前に出航の意図を伝える事になっているので、電話でその旨連絡。月曜日に出航する場合には、日曜日の午後、引き潮を利用しマースデンポイントの建設中のマリーナに行く事になる。関係した業者に支払いを済ませ、再び出港準備。リグを変更しセールを新調したのに、未だ一度もテストをしていないのが気になる。 計器類のチェックをしていると、今度は風向風速計が作動しない。パネルを取り外し、2時間ほどかけ電機系統のチェックをするが、原因不明。ダーマの電子計器に馴染んでいる専門家のウェインに連絡をとるが「別なマリーナで作業をしているので、計器のチェックは月曜日以降になる。」と言う。風向風速計は、仮に作動しなくても航海に大きな支障は無いが、虫の知らせというか、不安が次第に高まる。マリーナ内でも風が吹きつのり、時々豪雨に見舞われるにで、出港準備も遅れ勝ち。積荷を整理しながら、残り1日で積み込み作業を終えるのも難しくなってきた。この時点で、今回の出航は見合わせることにし、関係者にその旨連絡。現地の生活を楽しみながら、あせらず十分な準備をするように気持ちを切り替える。

金曜日なので夕食をとるため、ワンガレイ・クルージング・クラブへ向かう。顔なじみのマイルスが待ち構えており「日曜日にレースがあるが、強風が予想されるうえ、未だクルーが決まっていない。」と言う。今日、彼はリバーサイド・マリーナで愛艇「EMPRESS」を上架し、レースに備え船底掃除をしていた。その時は、日曜日の午後レース海域をマースデンポイントに向かうので、お互いに写真を取り合うことを約束した。「EMPRESS」ではこれまでに、3回レースに参加している。2週間前のレースの時は、テストを兼ね、ダーマで参加する事を関係者に伝えていたが、結局作業が終わっていなかったので断念した経緯がある。マイルスから「EMPRESS」のロゴ入りのベストをプレゼントされ、自宅に招待されたこともある。彼の計らいで、「刈谷セーリングクラブ」の黄色いペナントがクラブに掲げられている。出航を延期したのなら是非、と言う事で日曜日には彼の船で、4度目のレースに参加することにした。

6月29日(土)
日曜日にモーテルを引き払い船で生活する予定だったが、荷物を半分ほど船に移し終えた時点で、更に1週間延長する事にした。昼頃日本レストラン「ASAHI」のオーナーのスコットから電話で「日曜日にゴルフをしないか?」との誘いあり。月曜日に近くの「ノースランド・ゴルフクラブ」でプレイする事にした。前回滞在時にノースランド・ゴルフクラブの半年間の会員になったが会費は6ヶ月で5百ドル(1NZドル=約80円)、グリーンフィー他一切無し。今回は1ヶ月間の短期会員で80ドル。ビジター料金は、1ラウンド30ドルなのメンバーとなる事の特典は大きい。丘陵地に作られたゴルフ場なので、ややアップダウンはあるが、雨が降っても直ぐドライになるのが長所。天気が良いときは、早朝散歩を兼ね、9ホールを一人で廻ることが多いが、最近は遠ざかっていた。

以上

2008/7/1/08:30JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
次の高気圧は7/8頃タスマン海を東進してくる見込みです。この高気圧がどのくらいニュージー北沖にあるかに注目してください。

2008/7/3/09:15JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信しておりましたが、資料の送付失念してました。失礼しました。
7-8月の太平洋の平均的な台風の通過頻度図をお送りします。黄色から赤になるほど頻度が高くなります。
ただし、近年台風の発生や経路も年較差が大きいので、利用に際してはこの辺りを考慮してください。
ニュージー近海の気象は、西高東低が続きそうで、日本時間の7/10ころからゆっくり東へ動き始めるようです。ここは7/10以降どうなるのかを見極めた方が良さそうです。

台風の通過頻度図7月
台風の通過頻度図8月

2008/7/4/10:05JSTT
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
現在オーストラリア南東部にある高気圧の東への移動はゆっくりで(東側の谷の移動も遅い)、ニュージーの海況も7/8までは時化。7/9以降ニュージー近海は南よりの風もやや収まる気配ですが、7/11には高気圧の中心が東へ移動するため、同海域は東よりの風に変わりそうです。
気になるのは、この高気圧北側のフィージーからニューカレドニアにかけての海況で、高気圧の影響で東よりの風が30kt前後、波高も平均で4m程度となることが予想されます。
一般的には高気圧が東に去ることで徐々に収まるはずですが、予想が7/11までしかないため今のところなんともいえません。仮に悪い海況が続くようであれば、北上はかなり厳しいと思いますので、オーストラリア東岸に近づいての北上、あるいはどこかで天候待ちも検討しなければならないようです。



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