2007年10〜11月
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10月18日スペインのラゴスを出港、10月22日カナリー諸島のプエルト・カレロに入港
10月25日プエルト・カレロを出航、10月26日カナリー諸島のラスパルマスに入港
11月2日グラン・カナリア島のラスパルマスを出航
11月10日正午 カーボベルデ諸島、サオ・ヴィセント島のミンデロに到着
11月13日1300ミンデロを出航、ケープタウンへ向かう
11月23日20:30、西経24度30分地点で赤道を越え南半球へ入る
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目黒さん入港のカナリア諸島ランザローテ島、グラン・カナリア島関連の → Web Site集
目黒さん入港のカーボベルデ諸島、サオ・ヴィセント島関連の → Web Site集
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kiseki

Wind Speed = 5kt(2.5m/s), = 10kt(5m/s), = 50kt(25m/s)

  DHARMAの単独世界一周航海日誌   2007年10〜11月          戻る

2007/10/10/10:00JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
出港予定10/15で準備お願いします。今のところ、10/13までは航路上に小低気圧が予想されますが、10/14以降はこの低気圧も東へ去り、カナリー諸島への航路は高気圧の南東側で、北東風15-20ktが続きます。
この後の情報は日本時間の10/12と10/15朝にお送りします。

2007/10/12/09:40JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
現在カナリー諸島付近に小低気圧があり、これからゆっくりと北東進する見込み。この低気圧による航路への影響は軽微。一方、イベリア半島沖からカナリー諸島西沖へのびる高気圧は今のところしばらく堅調な模様。航路上は北東風が続く見込みで、風速は時間と共に徐々に上がり、10/19頃には10m/sをややオーバーする可能性もあります。ただし、時化には至らないと予想されます。

2007/10/15/09:00
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
現在航路上には弱い低気圧がありますが、海況には影響ありません。10/18以降は航路の西側にほぼ定常的に高気圧が居座り、航路上の風は北〜北東で安定、風速も10m/s未満が予想されます。

2007/10/16/08:30JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
イベリア半島沖の高気圧は引き続き堅調で、航路はこの高気圧の南東側。
ほとんど北東風が続き、風速はおおむね10m/s程度。海況に大きな変化はありませんが、ほぼ真追っ手となるのでご注意ください。

JST10月19日0200 船内時10月18日1800 GMT1700
35−15N/10−11W NE6m/s COG210T SOG4kts 快晴 26℃ 1018hPa

10月始めに日本から戻ったときは、1週間程度スペインやモロッコを旅行しようかと考えていた。帰国中、コークであった鐙摺マリーナ籍のNIRAIから、ラゴスのシップヤードで修理したいとの連絡があった。シップヤードのボスとNIRAIの修理案件について話している過程で、ダーマの修理の話をし、結局ここで気になっている総ての修理をすることにした。完了まで、一週間の予定が3日延び、10日間になったが、これまでの修理実績と比べると最速。値段や出来栄えもまずまず。

出航前の3日間は、修理の詰めと出港準備が重なり疲れ気味。夜は当地で知り合った仲間達と、誘ったり、誘われたりで飲み会が続く。出航前夜は、近くのフィッシュレストランで、世話になった人達を招待。スイス人、カナダ人、ポルトガル人等国際色豊か。2組の若い家族も参加し、5歳から3歳の女の子達も参加したので年齢層も豊か。芸達者のマルセルがギターを持ち込み、大いに盛り上がる。

翌日昼頃船を下ろし、夕方4時にやっと出航。ラゴスの町の灯が後方に霞んで見えなくなる頃より、ジブラルタル海峡を通過する大型船の行き来が激しくなる。大型船の航路を完全に横切ったのは明け方近く。疲れと飲みすぎが重なり、徹夜でワッチをしながら久々に船酔いを感じた一日だった。

2007/10/19/08:50JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
10/21/12GMTまでの気圧配置と海況に大きな変化はありませんが、10/22GMT以降、それまで堅調だった高気圧が消滅し、イベリア半島沖から低気圧が南東方へ進んでくる見込みです。航路への直接の影響はありませんが、東へ進む低気圧の南側となるために風は西よりに変わる見込み。風は10/22以降弱めが続き、10/22-23および10/25はかなり弱くなる可能性もあります。

2007/10/20/08:30JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
当面航路の西側に南北に伸びる高気圧があり、北東風が吹く気圧配置に変わりはありませんが、この高気圧が徐々に弱まる傾向にあります。10/26GMT以降西から谷が近づき、風は一時弱まり、10/27以降は南よりの風となる見込みです。

JST10月20日0200 GMT 10月19日1700 船内時1800
33−29N/11−18W NE8m/s COG215T SOG 5.5kts(0.5kt強の南流ー随伴流あり)晴れ 25℃ 1018hPa

馬場様
「順調な航海が続いています。本日ラスパルマスで出航準備中の菅原さんと電話連絡できました。カナリー諸島の北側にランザローテ島があります。
島の東側中腹にあるマリーナ、プエルト・カレロに入港し、その後ラスパルマスに向かいます。
ケープタウンにはラスパルマスから直行します。出航のタイミングとしては11月1日を予定しています。」

プエルト・カルロまで残り300海里。本日1500電話にて、10月22日に入港する旨連絡済。

 プエルト・カルロからラスパルマスまでは100海里。一昼夜の距離。帰国中に気象海洋の馬場さんを尋ねたとき、設計者の林先生他、数人のヨットマンとも会うことが出来た。
 その後、その中の一人、舵社の安藤さんからメールが入り「ダーマが航海中に訪問したベスト・クルージング・スポットは何処でしたか?」との問い合わせがあり、返事に窮した。
 寄港した殆どの港は、忘れがたい良い思い出が詰まっている。しかし良いクルージング・スポットだったか如何かについて、納得できるような回答を持ち合わせていないのも事実である。航海中、出会った幾人のセーラーから「ダーマのセイリングはVOYAGE(航海)であって、CRUISING(巡航)ではない。」と言われ、自分でもその通りだと思っている。

しかし、40年来の舵の愛読者の一人として、又ヨット乗りとして、貢献できる機会があれば、積極的な貢献をしたいとの思いはある。ビスケー湾を過ぎ、イベリア半島に沿って南下をしてから、又ラゴスを出航して今日に至るまで、実に快適な海況に恵まれ、本航海で一番快適な航海を続けている。当にクルージング気分である。
 寄港を予定しているラスパルマスには、ジミイ・コーネルが主催しているARC(Atlantic Rally Cruising)の出航地である。毎年11月の最終日曜日、カリブ海のバルバトロスに向け3000海里の航海に参加するため、数百隻のヨットが集まる。「WORLD CRUISING HANDBOOK」 や 「WORLD CRUISING ROUTES」の著者として、又自らも15万海里(地球7回半に相当)の航海経験を有するジミイ・コーネルが推薦するクルージングコースである。

昨年行われたARCレース、2006ラスパルマス出発26/11/2006
大西洋に集結するクルーザー:グランカナリア島-サンタルチア

 日本ヨットの参加の有無は不明だが、最も安全、快適、そして出航地ー入港地ともに、帆船の歴史、良港、美景と歓待が約束されている、世界最高のクルジング・コースでありスポットとも言えるだろう。

現在ラスパルマスでカリブ海に向け、出港準備(カタマラン)中の菅原さんの話では、「ポンツーンは既に満杯。岸壁近くに投錨することになる」との事。ポンツーンの予約が不可能なら急いで行く理由が無くなった。
 一方ニュージランドーアイルランドースペインと同じルートを航海してきた73ftの大型ヨットのグロリアからは「タミヲの帰国中にラゴスからスペイン(ソスタ・デル・ソル)に移動した。10月20日にスペインを出航し、プエルト・カルロに向かう。ラスパルマスは混雑している。カナリー諸島には、良いマリーナが他に幾つもある。プエルト・カルロはその中でもベストマリーナである」との連絡が入っている。
 グロリアと再会出来るかどうかは別として、「ラゴス」をポルトガル、スペインの中でも最高のマリーナと言っていたロジャーの言葉を信じ、ラスパルマスに入る前に、急遽プエルト・カルロへの入港を決定し、束の間のクルージング気分を味わうことにした。

The Marina of Puerto Calero - Lanzarote
以上

2007/10/21/07:25JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信しました。10/22頃の到着了解しました。
海況に大きな変化はありません。ただし、高気圧が次第に弱まるため、10/23以降風もやや不安定になります。
ご安着の一報をお待ちします。
Bon Voyage

2007/10/23/08:48JST
<馬場社長から目黒さんの情報>
日本時間の10/22の21時頃目黒さんから電話連絡があり、無事カナリー諸島に到着されました。
入港された港の名前を失念してしまいましたので、どなたか御存知であれば御連絡ください。
数日彼の地に滞在された後、100マイル離れたラスパルマスに行かれ、弊社の顧客である「若水/カタマラン」の菅原さんとお会いになり、11月上旬にはケープへ向けられる予定です。

2007/10/26/09:11JST
<馬場社長から目黒さんの情報>
目黒さんは現地時間10/25/11:00プエルトカレロマリーナを出港され、ラスパルマスに向われました。現地到着は10/26/12:00予定。風は北東の順風が予想されます。

現地時間10月26日1100
馬場様
現地時間10月26日1100、ラスパルマスに無事到着しました。
港に入る直前、若水の菅原さんがラバーデンギーで迎えに来てマリーナのポンツーンまで先導。
菅原さんが事前に交渉してくれたお陰ででバースを確保。

グラン・カナリア島ラスパルマスのマリーナ

舫いをとるのももどかしく、皆で近くのレストランでビール。よく覚えていないが大ジョッキ4杯。
今ダーマに戻ったところ。
気象次第ですが11月1日出航を予定しています。当地の状況は改めて別途メールします。

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2007/11/3/08:15JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
海流図を添付します。
気圧配置に大きな変化なく、航路上は北東風が続きますが、11/6-7は風弱まる可能性もあり。
今現在の状況では、海流、風ともに島の沖側を通過しても問題なさそうです。


JST11月3日2100 GMT/船内時1200
26−34N/16−12W NE6m/s COG215T SOG 4.5kts 晴れ  1018hPa 26℃ 湿度64%

馬場様
昨日出航しました。海流図有難うございます。海況に大きな変化が無い限り、毎週月ー金の2回気象図の送付お願いします。ケープヴェルデ諸島の東西どちらを通過するかにつきましては、今後の海況を見て決めるようにします。

出航前夜は、近くのデパートの食品売り場で最後の買い物をした後、お世話になった方々と最後の晩餐。出航以来初めてだが、今回は総て日本人セイラー。場所は、近くの比較的高級そうなフィッシュレストラン。メンバーはエミュの米子艇長、若水の菅原艇長及び新進気鋭の乗組員寺沢さん、伊芸さん、上野さん及びダーマ艇長の合計6名。クルー達はハチキレンバカリノ若さで、眩いほど。食欲も旺盛。店内では、沖に投錨している帆船(英国籍)の乗組員50名のパーティの真っ盛りでカナリ賑やか。

翌日は、若者達にデッキやドジャーの洗浄を手伝ってもらい、その間清水タンク洗浄と給水を完了。何時ものメンバーとなじみのセーラーズ・バーで最後の一杯。このバーの壁には数え切れないほどの帽子が飾ってある。バーの主の依頼でダーマの帽子を進呈。先方から店のロゴの入ったTシャツを記念にいただく。若水で早い昼食の冷やしうどんを御馳走になり、いよいよ出航の時が近づいてきた。ダーマをバースからテキサコの給油ポンツーンに移動、給油完了。次は隣接するマリーナ事務所で出航手続き。タバコを一服し、ポンツーンを離れる。耳をつんざく様なホーンの音に見送れて湾口へ向かう。出航手続きをしてくれたマリーナの職員が、頭を垂れ、両手を合わせてダーマの航海の安全を祈っているのが目に入る。当方も大声で別れを告げる。間もなく若水が追いつき、一時間ほど伴走。ラスパルマスでは短期間の滞在だった、日本のヨットマンと中身の濃い時間を過ごすことが出来た。ここで会ったヨットマンとは、何れどこかで再会するだろう。是非再会したいと願っている。

最後の別れを告げ港に向かう若水が、直ぐに後方に消えて行く。次にラスパルマスの港が、続いてグランカナリア島が次第に後方に小さくなり、霞んで行く。灯台や町の明かりが総て後方の闇に飲み込まれるように消えていったのは、夜中の午前零時。ここからケープタウンまで4500海里。海流や風の関係で遠回りする可能性があるので実際の航行距離は5000海里近くなるだろう。入港は12月の中旬。

2007/11/4/07:00JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。
航路上の気圧配置は、高気圧は弱いながらも安定。11/9以降勢力強まり、北東風が20kt前後とやや強まる見込み。
また長丁場が始まりますが、こちらこそ宜しくお願いします。

JST11月4日 2100 GMT/船内時 1200
25−19N 17−42W NNE 3m/s 機走 COG 220T SOG 5kts 晴れ 28℃ 50% 1015hPa

馬場様
風弱く、昨日夕刻より機走に入りました。11月7/8日までこの傾向が続くとすれば、ベルデ諸島で給油する可能性がでてきました。

出航時は10m/s前後の順風だったが、翌日正午には6m/s、夕方には2-4m/sまで落ちる。夕方まで2−4ktsで帆走していたが、風の振れ激しく、残り波でセールがばたつき始める。1800時セールを下ろし、機走開始。引き続きベルデ諸島の西北端に向け機走中。

2007/11/5/09:05JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。
高気圧圏内の風が弱い状態は11/5まで。11/6からは順風が期待できます。
今回84時間予報をお送りします。もっと長いのをご要望であれば対応しますが、画像サイズと予報の信頼度からは84時間程度で良いのではとも思います。

JST11月5日2100 GMT/船内時1200
23−42N/19−07W E 5m/s COG225T SOG5kts(0.5ノットの随伴流あり) 晴れ 28℃ 62% 1016hPa

馬場様
現地時間0900時、北東風5m/sが安定してきたので、帆走に切り替えました。燃料についてですが、出航時290リットル搭載。巡航速度5ノットで7日間機走可能です。途中ドルドラム(赤道高圧帯)とホースラテチュード(中緯度高圧帯)の二度の無風域を通過するために5日分。出入港と予備に2日分必要です。ラスパルマス出航後、思いがけず微風に会い、1.5日機走したため、予備燃料の不足を懸念しています。
これを補うため、ベルデ諸島のSAO VINCENT島のMINDERO(PORT−GRANDE : 16−53N/25−00W)へ1−2日程度の寄港を予定しています。

早朝雲多く、メール不通。日中になり、上空を覆う雲量(綿雲)は30%程度。久々の順風満帆。超気持ちいい。
目的地まで500海里。

2007/11/6/09:05JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。
航路の西側には南北に伸びる気圧の峰がありますが、強弱を繰り返し、この結果風もやや不安定となっています。出来ればベルデまで最短コースをとらずにやや陸よりを南下される方が風は安定しているはずです。なぜなら、大陸上は低圧部となっているため、沖より気圧傾度が急だからです。とはいってもベルデまであと少しですから、ここは風が出てくるのを待つのが得策かも。
明後日11/8は再び風弱まりますが、11/9からはしっかりとした北東風が吹く見込みです。

情報送信を週3回にすること了解しました。ただし、小生も動き回っているので、外からの場合抜ける事が予想されます。その折は文面にその旨書いておきますので悪しからず御了承ください。

JST11月6日2100時 GMT/船内時1200時
22−15N/20−18W ENE5m/s 180T 4.5T 晴れ(薄曇り) 26℃ 74% 1019hPa  残り400海里

馬場様
現在の風が続く限り、20Wに沿って南下します。風が落ちたら機走で直行し、次の吹き出しを待ちます。気象予報送付できない場合、事前に伝えていただければ、当方より取りに行きます。現況以下の通りです。

出航以来晴天が続いていたが、次第に雲の量が増えている。昨夜は短時間の雨。今朝は薄曇。東のアフリカ大陸よりの空は薄茶色。太陽が曇ガラスを透かしたように見える。サハラ砂漠の砂塵が上空を覆っているようだ。何時もより湿度が20%高い。

以上

2007/11/7/07:55JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
84時間予想を添付しました。 ベルデ諸島までは、引き続き風速やや弱め。11/9以降は15kt前後で安定してきます。

JST11月7日2100時 GMT/船内時1200時
20−41N/21−30W ESE7m/s COG210T SOG5.5kts 晴れ(薄曇) 29℃ 68% 1017hPa

昨日マッコウクジラらしきものを直近に見たが、その前夜、海面に白い浮遊物を数個見つけ、明け方になり、それが甲イカの骨だと解った。イカはマッコウクジラの大好物。甲イカもマッコウクジラも暖流に生息する。
今朝は半年振りに大型のトビウオが見事に海面を飛翔するのを見た。どうやらアゾレス暖流の海域に入った模様。気温/湿度ともに暫時上昇してきた。

寄港を予定している、サオ・ヴィンセント島(ヴェルデ岬諸島)まで、残り300海里。当初ヴェルデ諸島への寄港は予定していなかった。ケープホーンを廻り、チリのプエルトウイリアムからカリブに向かう途中、フォークランドに寄港した時もそうだったが、島から遠ざかろうとしても、魅せられたように引き寄せられて行く。だからこそ「両諸島とも、大航海時代、帆船の主要な中継基地として栄えたのだろう。」と思いを新たにしている。
寄港の可能性がでてからありあわせの資料で調べたところ、ヴァスコ・ダ・ガマ(旗艦:サン・ガブリエル号)、マゼラン(旗艦:トリニダッド号)、キャプテン・クック(エンデヴァー号)、ダーウィンの乗船したビーグル号等大航海を前に寄港している。近世では浦賀で日本に開港を促したペリー提督の率いる旗艦:ミシシッピー号も寄港。詳しい文献はないが、コロンブスも第3次航海で寄港している可能性がある。

何れにしろ、ここ数日で「寄港予定無し」から「寄港の可能性あり」に変化し、次第に「是非寄港したい。」に変わってきている。ところが予期に反して、微風から順風に海況が変化し、順調に船足を延ばしている。赤道無風帯も順風であれば、寄港する積極的な理由がなくなってきたのも確か。寄港するか、直行するか大いに迷っているが、どちらでも対応できるようにしている。

2007/11/8/06:35JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。本日は箱根(当方32年目の結婚記念日)より送信しています。
航路上の気圧配置、風は安定しています。
赤道無風地帯も11/15までの予想を見る限り、平均15ktの風で安定しています。ベルデ諸島で補給の件、しばらく安定した海況が期待できることや、これからの長い航海と、南大西洋に入り、低気圧から離脱する可能性も考えれば、油は十分に持たれたほうが良いかもしれません。 本日は30×30の予想図を添付します。

JST11月8日2100 GST/船内時 1200
19−25N/22−22W NE6m/s COG235T SOG4.5kts 晴れ(薄曇) 27℃ 68% 1017hPa 入港まで残り200海里

馬場様
ヴェルデ岬諸島の中で最良港と記載されているSao・Vicente島のMindeloに寄港することにしました。入港は11月10日土曜日の正午になりそうです。土曜日なので入国手続きが月曜日(11月12日)にずれ込む可能性がありますが、出来るだけ早く出航する所存です。箱根での休日、家族サービスをお楽しみ下さい。現況以下の通りです。

相変わらずアフリカ大陸のある東側の上空は黄砂に覆われている。数日前に西サハラ沖を通過し、現在はモーリタニア沖300海里を航行中。大陸の影響で、卓越風の風軸である東北東を中心に、風向が頻繁に変わる。振れ幅は左右30度、頻度は30分から2時間。風向の変化に伴い風速も変わる。変化の規則性は定かではないが、風が東に振れれば温かい湿った風となり、北に振れれば乾いた涼風となる。昼頃体長1m強の海亀が風と波に逆らい陸地に向かいゆっくりと進んでいった。マッコウクジラが生息している海域の証でもあるかのように、時折甲イカの骨が浮かんでいる。

2007/11/8/06:35JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。本日は箱根(当方32年目の結婚記念日)より送信しています。
航路上の気圧配置、風は安定しています。
赤道無風地帯も11/15までの予想を見る限り、平均15ktの風で安定しています。ベルデ諸島で補給の件、しばらく安定した海況が期待できることや、これからの長い航海と、南大西洋に入り、低気圧から離脱する可能性も考えれば、油は十分に持たれたほうが良いかもしれません。 本日は30×30の予想図を添付します。

JST11月9日2100 GMT/船内時1200
18−01N/23−45W ENE8m/s COG240T SOG5kts 快晴(薄曇) 26℃ 74% 1015hPa 入港まで残り100海里

入港時及び出航予定が決まった段階で連絡するようにします。赤道域を超えてから遭遇する南東貿易風への対処ですが、赤道域の東よりの風を捕まえる前まで(ベルデ出航後)25Wに沿って南下するか或いは20Wに近づくまで南南東に向かうか、何れが良いでしょうか?

2007/11/10/7:30JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。イリジウムの残は十分でしょうか。
南大西洋の気圧配置を見ていますが、今のところ安定しています。
南東風は赤道を越えたあたりから吹き始め、南限は15-20S付近まで。その後次第に東〜北東へと変化しますが、これらを支配するのはケープ西沖の高気圧の動向です。
ベルデ出港後の航路ですが、まずは0N−20Wを目指され、南東風に出会った後に南西方へと進路をとられ、高気圧を回り込む形でケープへ向かうことをイメージしてください。

現地11月10日GMT/船内時1200
本日正午予定通りサオ・ヴィセント島のモンデロに到着。港の奥、町に近い一等地に建設中のマリーナがあり、マリーナのポンツーンに係留。マリーナの完成度は50%程度。来年にはマリーナの付帯設備が利用できそう。入国手続きは月曜日。それまでの間、上陸は自由(と解釈)。夕方近くのバーでシャワーを浴び、偶々であったフランス人のカップル(昨日到着。沖に投錨中)とビールを飲み、船に戻ったところ。
手続きが滞りなく進み、海況に問題なければ、火曜日に出航予定。

追伸:イリジュウムの残り200分です。追加の手続きお願いします。ケープタウンまでの航路のイメージが明確になりました。

2007/11/12/09:15JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
192時間予想図をお送りします。
赤道通過時の経度ですが、現在の予想では20Wより25Wの方が風は吹くようです。

2007/11/14/08:51JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
当面北東よりの順風が続く予想に変更ありません。10N以南から東よりに、5N以南から南分が入り始めます。赤道上の風は20W付近で南東で平均10kt、25Wでは12,3ktで西よりの方がやや強めです。
低緯度でのイリジウムは時折通信が不安定になることがあるので、メールが溜まる可能性もあります。従ってそちらからリクエストがない限り予想図の添付を控えます。いずれにしても気圧配置は当面安定していますので御心配なく。

JST11月14日2100 GMT/船内時1200
15−16−N/25−14W ENE8m/s COG180T SOG5.5kts 快晴(薄曇) 29℃ 65% 1016hPa

馬場様
気象状況了解しました。当面20Wと25Wの間を南下するようにします。ところで南大西洋に存在する高気圧の中心部現在どこにあるのでしょうか?

現況及びミンデロ(ヴェルデ諸島のサオ・ヴィセント島)の様子など以下記載します。現地時間及び船内時はGMTマイナス1時間(日本との時差10時間)ですが当面GMTを使用します。

正午近くから夜半にかけて風速は8-9m/sまで上がり、艇速も6ノット上がる。夜中から夜明けまでの間は5m/s前後となり、艇速も4ノット前後となる。従って平均すると5ノット弱。

昨日午前中に出航手続き、洗濯物の回収、野菜など若干の買い物を済ませ、現地時間11月13日1300出航。入港以来親しくしていたフランス人のカップル(アンリとフロレンス)はフェリーで隣の島に観光旅行。自分も誘われていたが断った経緯がある。前日彼らのヨット(10mアルミ艇)に夕食を招待してくれた。税関や入国管理事務所へも案内してくれ、彼らのお陰で、入国手続きを無事済ますことができた。出国手続きも同時にしようとしたが、こちらのほうは係員の指示に従い出航日に手続きをする事になった。

アンリは45歳、洋酒メーカー(へネシー)に勤務している。フランスの優良企業の大部分は、6年間勤務すると1年間の無給休暇を取ることが出来、アンリはそのシステムを使って今年の7月から一年間のクルージング実施中。週末にはブラジルに向け出航予定。一年後に会社に復帰したときは、元の職場、元のポストに戻ることが保障されている。「クルージング中に考えが変わってきている。クルージングが終わった後、以前と同じように勤務できるかどうか解らない。」と不安と期待が入り混じった表情で現在の心境を説明してw)「・譴拭・侫蹈譽鵐垢録・覆硫湛・・稜箍饉劼剖侈海靴討、蝓⊂・靴魯▲鵐蠅汎韻検・・w)暑uシ

ー日前、イギリス国籍のヨット(ジャヌー 37ft)が入港。ダーマの傍に係留している。こちらは自分と同年輩と思われるカップル(グラハムとチャーリー)。出航時に舫いを外してくれた。彼らの問いに答えて、ケープタウンへ向かうと言うと、彼らも数日中にケープタウンに向かうという。途中英国領のアセンション島に寄港するので、ケープタウン入港予定は12月末。ダーマと同じロイヤル・ケープタウンヨットクラブに係留するらしい。

以下町の印象等別途送ります

2007/11/15/08:45JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信しました。
航路上の風は多少の強弱はあるものの引き続き安定しています。
南大西洋の高気圧ですが、現在はケープの西沖にあって、西方から南東進する低気圧との兼ね合いで強弱を繰り返しています。高気圧の周辺は南北、東西に低圧部あるいは低気圧が存在するため、風、波共に強いのが現状です。
赤道を越え、南東風に遭遇する辺りから10S-30Wを目指し、その後30Wを真っ直ぐ30Sまで南下してから南東へと向かい、高気圧の動向を見ながらその中心の南側40Sを東進するイメージが最も現実的でしょう。

JST11月15日2100 GMT/船内時1200
13−42N/24−37W NE7m/s 170T 5knt 快晴(薄曇) 28℃ 75% 1015hPa

気象情報有難うございました。航路のイメージが明確になりました。明日予報マップの送付お願いします。

順調な航海が続いているが、相変わらず夜半から日の出までの間に風が落ちる。早朝4時には3m/s以下、風が落ちると北に振れる。艇速も2ノット以下。セールがバタツキ始めたので、朝8時迄4時間機走。

−−−−−−−−−−−− ミンデロ便り −−−−−−−−−−−−

ミンデロには土曜日の昼から火曜日の昼まで3日間滞在。町の印象だが、どのように表現したらよいのか戸惑っている。これまでも殆どの寄港地が始めて訪れたところだった。にも関わらず、異文化/異邦人との出会いといった印象はあまり無い。無意識のうちに、過去の知識から何らかの関連付けが出来ているのだろう。カナリア諸島のラスパルマスに上陸したときに気がついたことだが、通常異なった国や場所に似たような雰囲気を持つ町や佇まいがあるのだが、ラスパルマスには比較すべき妥当な例が見つからない。ラスパルマスはラスパルマスでしかないことに気がついた。ミンデロではその度合いが遥かに強く、何処とも比べようが無い。

地元の人達(クレオール:アフリカや欧州以外の植民地で生まれ育った人々の総称。地域ごとに独特の言語/共通語が存在する。)は温和でどちらかと言うと人懐っこい。最初に気がついたのは、歌と踊りが人々の生活に密着していることだった。到着した日、ヨットマンが集まる近くのバーでシャワーを浴びビールを飲んでいた。バーの中でも地元の歌が流れていた。歌にあわせて地元の人達が、手足や身体を上手に使い、リズミカルな動きをする。その動きがとても自然で様になっている。格好が良い。
前日殆ど寝ていなかったので、船に戻り、一休みしたが、風に乗って聞こえてくる音楽で目が覚める。夜10時。音に誘われるように町に出てみた。 町の辻辻に若者達が集まっている。小さな子供づれの母親。お爺さん、お婆ん達もこれといった目的も無くぶらついている。数箇所のレストランやバーから心地よい音楽が流れ出ている。カリブの音楽にも似ているが、より深みがあるようだ。
港から少し奥まった一軒の店に大勢日人が集まっているので、引き寄せられるようにそちらへ向かった。道路に沿って作られた鉄格子状の壁から覗き込むように店の中を見ている。一瞬飾り窓かなと思ったが、店の中でライブミュージックをしていることが直ぐにわかった。集まっている人達の何人かが入り口に案内してくれた。

コーヒーを飲みながら暫し音楽鑑賞。そのうちに店の主が隣に座り、片言の英語で、バンドの人達のこと、店の由来、ヴェルデの音楽、観光スポット、等説明してくれた。主の名はアルミンド(ARMINDO)年のころ50歳。落ち着いて知的な感じがする。壁には古いものから最近の物まで、ポスターや写真で埋め尽くされている。店の名はPASTELARIA−ALGARVE。彼の父がポルトガル人の友人と40年前に始め、以後父が引き継ぎ、現在はアルミンドが経営している。
この店でも、人々が歩いたり、話したりしながら、一瞬の間に身体をリズミカルに動かしている。バンドは総て地元の人達。毎日顔ぶれが変わるらしい。上手ではあるが、普段着のアマチュアバンド。その日のお客は地元の人達らしく、私語 することも無くじっと歌を聴いている。私語を許さない、じっと聞き入るしかない雰囲気の音楽/歌が多い。アルミンドの説明では、ヴェルデの音楽には、スローテンポとリズミックな2種類の音楽があるらしい。

翌日の夜も、3軒ハシゴをして手作りのライブショーを聞きに行った。出航の日、昼間町をぶらついていたら、道路端で昨夜の歌姫の一人がキャンデーやお菓子を売っているのに出会った。ブラジルやトリニダッド(何れもクレオール)のカーニバルは、国際的になっているが、ここではその原型を見る思いがする。
柔和で人懐っこい彼らの心の奥の襞に隠れている感情、恐らく彼らも気がついていない、或いは言葉に表せない深い感情が、音楽と共ともに突然噴出するのであろう。多くの共感を呼んだとき、それが止まることなく噴出し続けるのだろう。カナリーと同様、ヴェルデ岬は大航海時代、欧州とアフリカを?ぐ十字路であった。残されたのは、見るも無残に荒廃した島々である。収奪される側で、想像を絶する苦難に身 任せながら生き続けるしかなかった彼らの最高の知恵がここの音楽に結集されているように思えてならない。

到着後、大帆船時代のモニュメントを探したが、それらしいものは見当たらなかった。途中でそれを探そうとした自分の浅はかさに気がついた。単に経済的な理由かも知れないが、恐らく地元の人々にとって、大帆船時代の記憶は葬りさるべき物であっても、決して大事に保存するに値しないものであろう。

何れ、観光資本が、観光客の目を引くために立派なもモニュメントをつくる可能性はある。カナリーはスペイン領に属し、世界有数の観光地として変貌しつつある。一方ヴェルデは近年共和国として独立したが、国際社会からむしろ孤絶している。これといった産業の無いヴェルデはEU諸国の支援を受け、その見返りに島々を観光物件として、各国の資本に解放しているとの話をフランス人のヨットマンから聞いた。
この国が大帆船時代のモニュメント作りに力を入れるか否かは、今後の為政者達への踏み絵となるかもしれない。いずれにせよヴェルデ共和国が、過去の歴史とともにその地理的特異性を消し去って活きることは、困難であるように思える。

異文化との遭遇により刺激を受けることは、旅の大きな醍醐味の一つである。だとすると、ここでは何処の寄港地にも増して、旅を満喫した事になる。

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目黒さん入港のカーボベルデ諸島、サオ・ヴィセント島関連の → Web Site集
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2007/11/16/09:40JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。
192時間予想を添付します。範囲を20*20にしています。南大西洋に入ってからは30*30でお送りします。
気圧配置、海況共に大きな変化はありません。赤道付近の風が気になるところですが、まだ8日余りの航程なので、今後の動向を見ていくことにしましょう。

JST11月18日2100 GMT/船内時 1200
08−19N/23−16W ENE 7m/s COG 170T SOG 5kts 晴れ 30℃ 65% 1013hPa

昨日午後より風向、風速ともに安定。風の振れ幅は20度以内、風速5−8m/sに収まる。
赤道に向かって順調に帆走中。

追伸:舵社の安藤さんへ以下お伝え下さい。宜しくお願いします。

安藤様
ラスパルマス(カナリー)からARC関連のニュースをお送りするつもりでおりました。
しかしながら、ARCのコミティオフィスが未だオープンされていなかったこと、加えて菅原さんの船の修理に追われ果たすことが出来ませんでした。お詫びします。菅原さんの方からニュースや写真が送られるものと思います。
目黒

2007/11/19/09:00JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信良好です。192時間予想を添付します。
引き続き航路上の海況に大きな変化はありません。赤道を越え、南半球に入った後は風が南東に変わり始めます。
南大西洋の高気圧が落ち着いてくれる事を願いつつ、今後はこの動向に注目しましょう。
菅原さんのARCスタートは現地時間11/25/午後です。途中情報あればお伝えします。
貴艇のご安航をお祈りします。

JST11月19日2100 GST2100/船内時1200
06−32N/23−10W SSE3m/s 機走 COG180T SOG4.5kts 曇 30℃ 68% 1011hPa

昨日は東の風5-10m/sで順調に帆走していたが、今朝0230時、風が弱まるとともに南に振れ、機走に転ずる。昨日までは積雲だった上空の雲も、夕方からは積乱雲に覆い尽くされるようになった。暗闇の中を壊れた蛍光灯の様に頻繁に稲妻が走る。時折昼間の様に辺りを照らし、雷鳴が数秒続くこともある。小雨の中、ひたすら夜が明けるのを待つ以外、成す術無し。
傾向としては常時東風だが、風向/風速ともに頻繁に変わる。可能な限り帆走しているが、夜が明けてからも2度風が南に振れその都度機走を間歇的に繰り返している。

風があるといっても、この一体は北東と南東の貿易風がせめぎ会うところ、気象上の僅かな揺らぎが、風向/風速に影響を与えているようだ。100年以上前、初めて単独で世界一周したスプレイ号のジョシュア・スローカム船長がヴェルデ岬を越え、ブラジルの東端まで航海した時の赤道越えの様子を次のように記述している。

 On the following day (15/09/1895), heavy rain-clouds rose in the south, obscuring the sun; this was ominous of doldrums.
On the 16th (September), the Spray entered this gloomy region, to battle with squalls and to be harassed by fitful calms; for this is the state of the elements between the northeast and the southeast trades, where each wind, struggling in turn for mastery, expands its force whirling about in each directions.

Making this still more trying to one's nerve and patience, the sea was tossed into confused cross-lumps and fretted by eddying currents.
As if something more were needed to complete sailor's discomfort in this state, the rain poured down in torrents day and night.
The Spray straggled and tossed for ten days, making only three hundreds miles on her course in all that times. I didn't say anything.

スローカム船長は、帆船の船長として幾度も赤道越えを経験しており、この海域の状況を熟知していた事が伺われる。赤道越えは今も昔も楽では無かった事を改めて認識している。昔の帆船乗りの苦労に思いを馳せながら、自分を励ましている。

2007/11/20/09:26JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信良好です。
レポートの積乱雲群はおおむね赤道までの海域に分布。今後24時間で濃密な分布域は一旦西へ移動する見込みです。
規模の大きな気圧系の風は東よりですが、積乱雲の下では対流が活発化しているため、この両者が影響しあって不安定な風の場を形成していると思われます。
赤道までは時折この不安定な風に遭遇されるかと思いますが、がんばってください。

JST11月20日2100時 GMT/船内時1200
04−53N/23−21W E5m/s COG180T SOG4kts(0.5ノットの反流あり) 曇天 29℃ 80% 1015hPa

今朝1000時大型のスコールが通過して以降、風向・風速ともに落ちついてきました。概況以下の通りです。

昨日は風弱く、正午より2000時まで機走。出航以来の機走時間合計23時間。スプレイ号は北緯6度から5度の間で酷い目に会っているが、計らずも昨夜は同じ緯度間で同様の目に会う羽目になった。

2000時、未発達の積乱雲の通過に伴い風が北東に振れ、風速も10m/sになったので、この積乱雲を追うように帆走を開始。それまで軽風の中を機帆走していたのでフルメインとオートパイロットの組み合わせ。2時間ほどこの状態が続いた後、突然風速が15m/sを越え、最大18m/sまで上昇。強いウェザーヘルムにより、オートパイロットが悲鳴を上げる。ダーマは風上に向かい、激しくセールがシバー始めた。暗闇の中、セールを3ポイントまでリーフしかけたが、2ポイントまで降ろしたところで、セールがスタック。セールは千切れるのではないかと思われるほど暴れまわっている。この種のトラブルは航海中初めて。4ポイント目のリーフロープがマストのクリートに絡み付いているのが原因。キャビンに入り、作業の手順を考えながらハーネスをつけ、一呼吸置いてマストに向かう。

作業は簡単に終わり、続いてオートパイロットをウインドベーンに交代。荒れてなければ簡単な作業だ。結局総ての作業を追えロープの整理が終わったのが丁度零時。この間終始、大粒の雨を伴う強風が続いた。

午前2時まで、次々に通過するスコールにあわせながら帆走。風が安定(南西10m/s)してきたのを確認してバースに潜り込む。明け方まで途中何度かセールや方向のチェック。4時風が落ちてきたので、帆走を諦め一眠り。疲れていたので熟睡。朝8時に目が覚めたが船はヒーブツー状態。メインセールを1ポイントまで戻し、再び帆走開始。幸いセールの傷みは無かったが。セールに貼り付けてあるJPN(日本の略)が一部剥がれていた。赤道通過まで残り300海里。


2007/11/21/09:08JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信良好です。
積乱雲群は西へ移動していますので、これからは以前のような不安定な風は少ないと思います。今後赤道付近から20kt前後の南東風が吹き始めます。現在の予想では7-8S付近まで。それ以南は東の風。更に15Sを越えてから徐々に北東へと回るはずです。風速は赤道以南で20-25kt。波高やや高く2-3m。
高気圧の中心は引き続きケープのはるか沖の35-40S、10-5W間にあります。風が北東よりに振れ始めたら、高気圧の中心付近を目指して南東へ変針してください。変身点の目安は15S付近。
高気圧の中心に近くなったら、その動向を見ながら適宜コースの調整をして、中心のすぐ南を東進してケープへ向けるイメージです。

JST11月21日21時 GMT/船内時 1200
航路のイメージが具体的になってきましたね。赤道を越えてからは、ダイナミックな帆走になりそうです。 風は未だ弱含み(3-6m/s)ですが海況は改善されつつあります。適当な時期に航路上の海流図の送付お願いします。現況以下のとおりです。

昨日、一昨日と48時間で稼いだ距離は100海里。合計12時間機走しているので、2日間の帆走距離は40−50海里。機走しなければ北緯5度前後の100海里を走るのに4-5日を要したことだろう。スプレイ号も同じ海域で300海里走るのに10日要したと嘆いている。

昨夜も不安定な南東風。間歇的に機走を繰り返す。4時ごろ仮眠中に開放中のハッチから雨が入り目覚める。突然のスコールに対応。スコールが去って凪がきてから、海面が何時に無くざわついている。潮目だと思うが、周囲は漆黒の海、想像するしかない。
0800時に腰の強い安定した東風が入り、どうやらドルドラムを抜けたかに思えたが、午後に入り又風が落ちてきた。海況が穏やかなので、船体や食料品のチェック。腐りかけた野菜(キャベツ、ニンジン等)一部廃棄。赤道を越え涼しい海域に入るまでは冷凍庫をフルに活用している。そのため、電力の消費量が多く、平均で一日2-3時間程度のエンジンを回す必要有り。

このところ夜になると雲行きが怪しくなり、明け方近くまでワッチをしていることが多い。大概音楽を聴いているが、印象に残った情景を俳句にしようと試みている。以下最近の作。

 稲妻が切り裂く何時もは天の川。
 稲光照らす彼方はドルドラム。
 雷鳴が始めの合図ドルドラム。

少し古いがヴェルデ岬のヴィセント島にて

 黄沙舞う我を誘う歌響く。
 夜半月古偲び歌いとし。

注:ドルドラム(doldrums):このページを見ると分かりやすいです(佐々木)→ 斉藤愛子レポート ザ・レース

2007/11/22/09:27JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。本日は30*30で192時間予報を添付します。
気圧配置に大きな変化はありません。
活発な積乱雲群は当面航路上には出てきませんが、3Sまでは時折小さな群れに遭遇するかもしれません。
20S付近からがこの航海一番のポイントとなるでしょう。ブラジル沖で発生する低気圧の経路はほとんどが南下型で、航路に接近するものはないと思います。高気圧の中心は今後もケープの緯度より南にあるようです。従って航路のイメージは昨日と同じでしょう。
明日11/23-25は連休に入ります。小生も2日程度海の上にいる計画で、通信できない可能性もありますので予めご了解ください。
なお、携帯は通信できます。

JST11月23日2100 GMT/船内時2100
00−35N/24−23W SSE8m/s 225T 4.5kts(0.5ノットの随伴流有り) 晴れ/曇 29℃ 77% 1013hPa

以前の気象図と比べ、新しい気象図では風が南に振れています。原因は高気圧の中心位置が変化(西或い北)した為でしょうか。現況以下の通りです。

南南東の落ち着いた貿易風を捕まえたので、本日中に赤道越えが出来そうだ。現在クローズホールドの2ポイントで帆走中。この状態での帆走が今月一杯続きそうだ。

昨日新たな気象情報を見たときは、一瞬愕然とした。風がこれまでの予想と比べ南にシフトしている。図面上の風向を示す矢印が、まるで槍衾のように見えた。丁度その頃、南東貿易風に出会い、風は真南から吹いていた。1.5ノットの西流を横切っている最中でもあり、このまま東に流されると、ブラジルの北岸、最悪の場合にはカリブ海に向かう事になる。場合に寄ってはブラジル東岸に寄港し、風待ちすることもシナリオに入れながら、上り一杯で帆走。今日は南南東ながら風が落ち着いてきた。0.5ノット程度の海流にも乗っている。風が東に振れる定点(7−8S/30W)に向け、順調に帆走中。


JST11月24日2100時 GMT/船内時 1200時
01−09N/25−17W SSE 9m/s COG 235T SOG 4.5kts 晴れ/曇 28℃ 82% 1013hPa

昨日2030時、西経24度30分地点で赤道を越えました。引き続き上りでS07/W30へ向かっています。
現況以下の通り。

現在海流なし。真横に横切っている可能性もあり。時々波悪く、海流が複雑な動きをしている様だ。
赤道祭りは当分お預け。今後の航海安全を期し、取り合えず冷えたビールで独り乾杯。

遅々とした 歩みなれども 大西洋 北と南を 一瞬に越え。
ドルドラム 遥々越えて 南風 交わしつ目指す サザンクロスを。


2007/11/25/16/30JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。
風が南よりで南下に苦労されているようですが、南下に伴って徐々に東に振れてくるはずですので、今しばらく辛抱をお願いします。
5S付近で南東。10Sでは東。高気圧がもう少し東に移動することを期待しています。詳細は明日予報図とともにお伝えします。

JST11月25日2100時 GMT/船内時 1200時
02−51S/26−15W SSE6m/s COG235T SOG4.5kts 晴れ 28℃ 76% 1014hPa

積乱雲の量が少なくなり、穏やかな海況が続いています。週明けに新たな気象予報図と海流図の送付お願いします。
現況以下の通り。

一昨日10m/sの向かい風で、波に揉まれたため、トイレのスルハルから若干のリークが始まった。総てのスルハルは、ニュージランドで取り外したうえで、パッキングを入れ締めなおしている。波に揉まれると、少しずつ接合部に亀裂あが入るようだ。取り合えず緊急のコーキングを行い現在リークは止まっている。今のところ大きな問題となる恐れは無い。
今日は15夜。天気がいいので月見を兼ね、赤道祭をすることにした。ビール、ワイン、シャンペン(何れも200ccの小瓶)を冷やし、サラミ、チーズ、からすみ等つまみも盛り沢山。

   満月を眺めつ祝う赤道祭、二日遅れて楽しみが増し。

2007/11/26/09:00JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。今日は2種類の図を添付していますのでやや重いかもしれません。
南大西洋の海況に特に大きな変化は見られません。気圧の峰が航路の南で北西方へのびているため、南東風がなかなか解消しませんが、この海域は他に選択肢はないので、いましばらくはがまんしてください。
海流図についいては、赤道を挟んで南北5度間は地衡流計算ができません。
航路付近には北上流があるようです。



JST11月26日 2100 GMT/船内時 1200
04−42N/26−44W NE 7m/s COG 200T SOG  5.0kts 晴れ 30℃ 70% 1014hPa

風が南南東から南東まで振れてきました。未だ南下は出来ませんが、少し落とし気味(クローズドリーチ)で帆走しています。若水/菅原さんに依頼したダーマ関連のメール(写真)届いたでしょうか。何時ものように関係者に送付お願いします。

昨日日暮れとともに大型のスコールが通過。以後スコールは航路上に現れなくなっている。群雲が多かったが、月の出を待ち、赤道祭りを兼ねた月見酒を楽しむ。後方で突然「ギャー、ギャー」と声がする。これは小型の敏捷な海鳥の鳴き声。月明かりの中、目を凝らしてみると、ダーマの周りを旋回している。その内船尾のパルピットに落ち着き場所を見つけたようだ(。いつでも飛び出せるように?)体を風上側に向けて留まっているので、自然に満月を背景とした角度となり、絶好の被写体となる。かなり近寄っても、フラッシュにも驚く様子は無い。別の一羽が船首側にも留まっている。その夜は音楽を聴き、月と鳥を交互に見ながら零時頃迄、何時もとは違う時を過ごすことが出来た。

 束の間の月見の酒を楽しまん共に過ごすは汝海鳥。
 束の間の月見の酒で赤道祭共に楽しめ汝海鳥。
 止まり木に見立てて憩う我が艇を昨夜来鳥今朝は出鳥。

2007/11/27/08:40JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。
風が南東へ変わったとのことで安心しています。南下に伴って更に東へ振れるでしょう。ただししっかりした風は10S以南から。
ブラジル沖で低気圧が発生する傾向にあります。この低気圧は南の高気圧の動向を見ながら30W付近で停滞〜南下といった動きをすると予想されています。低気圧の北側では東〜北よりの風となりますので、いずれこれを利用して南東方へと進路を向ける事が出来そうです。15-20S間がコースの転向点となるでしょう。

JST11月27日 2100 GMT/船内時 1200
06−55S/26−54W SE 10m/s COG 180T SOG 5.5kts 晴れ 28℃ 81% 1014hPa

昨夜より、真南に針路を取れるようになりました。風が更に東に振れたら、20S/20Wへ向かうつもりです。今後の低気圧の動向とあわせ、適切な針路を適宜アドバイスお願いします。

2007/11/28/09:10JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
今後航路南西方に低気圧の発生が予想されていますが、ケープ沖の高気圧の縁辺を南〜東へと進むので、航路への直接の影響はありません。 低気圧が高気圧の西側を南下するのであれば、高気圧もこれに押されて東へ移動するため、本船にとってはむしろ好都合で、今後北東よりが当初の予想より早めに吹く可能性があります。
12/5頃の予想では、15S付近から北東が吹く可能性もあります。その場合、当面の通過点を20S-20Wへ向けてはどうかと思います。その後は高気圧の動向を見てコースを決めましょう。
いずれにしても、高気圧の真東に位置する頃に、中心から300マイルほど離して左回りの渦を利用してケープへアプローチされるのがベストです。

JST11月28日2100 GMT/船内時1200
09−05S/26−59W NE12m/s 180T 5.5kts(0.5ノットの南流) 波高2−3m 曇/晴 28℃ 77% 1012hPa

気象/航路情報了解しました。風が東に回り次第、20S−20Wへ向かいます。

風が、10−20度前後の振れ戻しを繰り返しながら徐々に東に向かっている。大分走りやすくなったが時々特大のパンチングを喰らい失速。デッキを波が洗うとき、僅かの隙間からリーク。漏水箇所は、特定できていないが、水が溜まるところは、船首部とチャートテーブルの足元。漏水量は一時間に船首部で0.5リットル、後者は100cc位か。波が収まれば、又追っ手で走るようになれば、漏水も収まる筈。

2007/11/29/08:50JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。航路上の気圧配置に大きな変化は予想されていませんが、12/1以降高気圧はやや弱まり、徐々に東に移動する見込みです。現在波高は2-3mとありますが、これも本船の南下に伴い2m程度まで落ち着く見込みです。風速もやや弱まり10-15kt程度。低気圧は現在35S-40W付近にあり、一週間後には45S以南へ。12/6頃の高気圧の中心は35S-0E付近が予想されています。

2007/11/30/09:10JST
<馬場社長から目黒さんへの気象情報>
メール受信順調です。192時間予報とルートのイメージをお送りします。
前回20S-20Wをウエーポイントとお伝えしましたが、現在の風向や高気圧の一週間後の予想からみると、少し西よりの25S-20W付近の方が良さそうにも思えます。ご検討ください。



JST11月30日 2100 GMT/船内時 1200
13−16S/26−41W ESE 6m/s 160T 5.5kts 晴れ/時々曇 28℃ 79% 1015hPa

東風へ遭遇が遅れており、当面南下を続けざるを得ない状況です。当方も今後の適正針路を25S−20Wに変更すべきと考えていました。当分この方向で進めます。焦らず風にあわせて帆走するようにします。

昨日もそうだが、風が東に振れそうで振れない。数時間毎に南南東から南東、時には南南東に戻る。大きなスケールの風系、気象システムの中で2つの風系、南東貿易風と南大西洋高気圧の支配下にある東風が勢力争いをしている。この勢力争いに巻き込まれているようだ。いずれかの風系の支配下に入るまで、風が移り変わる時の暫移帯の幅が広い(数百キロ)ため、暫くこの状況は続きそう。何れのせよ、大きく迂回しながらも着実に目的地に向かっている。



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